手を取りあって

Life

こんにちは。
いよいよ緊急事態宣言が首都圏から近畿にも広げられることになりそうです。
昨年来のコロナ禍の中、「ソーシャルディスタンス」という合言葉のもと、人との直接的な接触はNGとされ、他人と一定の距離を保つことが社会の新しい常識となりつつあります。
仕方ないことなのでしょうが、それに伴って人間関係が希薄にならないか心配になります。
日本ではもともと人と人の距離はそれほど近くないので大した影響はないかもしれませんけど、それでも誰かと「手をつなぐ」「手と手を触れあう」機会は極端に減っているのではないかと思います。
野球やサッカーの試合でも握手はもとよりハイタッチすら避けて、拳どうしをぶつけあったり、腕と腕を合わせたりする光景が見られます。
それでも、たまに街中で、親子や恋人たちが手をつないで歩いているのを見掛けると、ソーシャルディスタンスがどうとかいうことは忘れて、ほんわかした気分になります。
やっぱり、手と手を取り合う姿というのは平和な社会の象徴なんでしょうね。

前置きが長くなりましたが、今日は私自身の経験を踏まえて「手をつなぐ」というテーマについて書きたいと思います。
みなさんは最近、誰かと手をつなぎましたか?
手から感じ取られる情報量というのは案外多いものです。
人は誰かと手をつないだ瞬間に、相手から色々な情報を感じ取ります。皮膚の固さや握力、指の太さなどからその人がどのような職業や趣味を持っているのか、なんとなく分かります。相手が自分に対してどのような感情を抱いているかが伝わってくることもあります。

「手をつなぐ」という行為には挨拶としての握手も含まれます。
日本にはそもそも初めて会った人と握手をするという習慣がありませんが、欧米の人と仕事をすると色々な場面で握手を交わすことがあります。
欧米人にとって握手は単なる挨拶ではなく、手を握り合っている数秒の間に色々な情報をやり取りしているように感じます。
一般的に男性はぐっと力強く握り、女性は柔らかく優しく握り返してくると言われています。
実際、僕の経験でも大抵の場合はそれが当てはまります。
ある時、男性ですごくソフトな握手をする人がいました。
後から人伝てに、その人がゲイであることを知ったのですが、今思えば、握手をする瞬間に、彼は自分の性的志向を伝えてくれていたのかもしれません。
逆に力強く握り返してくる男性は「俺はゲイじゃないぞ」という意思表示をしていたとも考えられます。
ビジネス上、そんな情報は必要ないのでは?と思いますが、初めから相手の性的志向を知っていれば、そのことで不愉快な思いをさせたり、受けることが減るとも考えられます。
そこには日本人と欧米人のジェンダーに対する感覚の違いがあるかもしれません。(すみません、これはあくまで僕の推測です。)
それと、もう一つ、握手をする際の「表情」との連動性もすごく気になります。
握手をする時には相手の目を見ながら微笑み合い、敵意が無いことを伝えるのが普通です。
しかし僕の経験ですが、商談を終え、最後に握手をするような場面で、たまに手は握り合いながら全くこちらを見ない人や、酷いときには別の人に話しかけながら握手する人がいます。
相手が意識的にやっているのかどうかは分かりませんが、これをやられると明らかに相手が自分に関心が無いのだと感じてしまいます。

握手に関するエピソードをもう一つ。
あるドイツの会社と仕事をした時のことです。
当時、その会社と新製品の開発をしていて、大事な局面で先方の開発者たちが来日しました。
僕たちは丸二日間、朝から夜まで試作を繰り返し、最終的にはかなり完成に近いところまで仕上げることが出来ました。
彼らが日本を発つ前日の夜、一緒に食事をしました。
別れ際に、その中の一人が僕に握手を求めてきました。
彼は僕の手を握ったまま、「この二日間、色々と苦労を掛けたが、満足のいく結果が得られた、本当にありがとう」という内容のことを言ってくれました。
その間、ずっと握手をしたままだったのですが、彼の言葉が単なる社交辞令ではなく、心からそう思ってくれているということが彼の手を通して伝わってきました。
体温とともに彼の感情が手の皮膚を通して流れ込んでくるような感じで、心が温かくなりました。
後にも先にもあの時ほど人の心が伝わってくる優しい握手を経験したことはありません。
僕にとっては忘れられない、素晴らしいコミュニケーション体験でした。

手をつなぐことが相手との関係を大きく変えることもあります。
もしあなたが好意を持っている人(今は友達だけど出来れば特別な間柄になりたいと思えるような)と楽しいディナーを共にし、帰り道に並んで歩きながら勇気を出してそっとその人の手をとったとします。
相手が嫌がらずにその手を握り返してくれたら、その瞬間に二人の関係は友達から一気に次のステップへと昇格します。
手をつなぐことで、世界が大きく変わるのです。
言葉で想いを伝えるのとは違う気持ちの共有感が生まれます。
手をつなぐ、とか抱きしめ合う、キスをする、ということが長い人類の歴史の中で連綿と行われてきたのは、それらが優れたコミュニケーション手段だからなのでしょう。
今は、ソーシャルディスタンスを取ることが大切なことは分かります。
一日も早く、本来人間が取って来た自然な距離感を取り戻せる日が来ることを切に願います。

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