コーヒーを言葉で語る1コーヒーを淹れるシーン

coffee

こんにちは。

僕たちは、好き嫌いはともかく子供の頃から何かと文章を書く機会を与えられてきました。読書感想文や卒業論文、企画書や報告書。文章を書く時、色々な事柄や感情を言葉で表現しなければならないことも多々あります。子供の作文では、「面白かったです」とか「悲しかったです」「美味しかったです」で許されますが、大人の文章では「何がどう面白かったり悲しかったのか」「どんな味がしたのか」を表現しなければなりません。ビジネス報告書では特に感情の表現は必要ありませんが、小説やエッセイ、食レポではこの「どんな風に」の表現の上手い・下手が読者のイマジネーションに大きな影響を与えます。思考や感情を言葉で表すのは案外簡単です。なぜなら、思考はそもそも言語で行われているからです。頭で考えていることをそのまま文章にすればいい。そういう意味では視覚や聴覚、嗅覚、味覚を文章化するのは難しい。ほとんどが、いかに形容詞を選ぶかということに尽きると思います。今日は、私が過去に書いた文章の中で、コーヒーを淹れる描写を集めてみました。何かの参考になれば幸いです。

長年使い込まれて濃い飴色になったカウンターの下にある扉を開け、小さな西瓜ほどの大きさの缶を持ち上げた。きっちりと密封された蓋を回し開けると、中には深い大地の色をした珈琲豆が詰め込まれていた。玻璃の空気を溶かすように、豊潤な南国の香りがゆっくりと漂い出してきた。男は缶の口に鼻を近づけ、ゆっくり深くその香りを吸い込んだ。

「男はミルに豆を入れ、ゆっくりと持ち手を回しだした。目には見えないが、豆の一粒一粒が金属の歯車に絡め取られ、砕かれていく姿が、木で出来た持ち手から伝わってくる。それは創造的な破壊行為だ。産まれも育ちも違う豆たちは、細かく砕かれる中で混ざり合い、互いの個性を活かしながら彼が求める至高の世界を作り出そうとしている。男は、この国の愚かな人々も少し珈琲豆を見習えばいいと思った。」産地の違う豆をブレンドすることで生まれる理想の風味のように、人類が協調しあい素晴らしい世界を作れればいいですね。

男はポットを再び火に掛けると、ミルからネルの中に、粉になった珈琲豆を移した。挽かれた豆からは凝縮された南国の太陽と大地の香りが漂い出るようだった。」

しゅーっという音を立てて水蒸気がポットの蓋を持ち上げた。ガスの火を止めてポットを手に持った。細く伸びた注ぎ口を 珈琲豆の真ん中辺りに寄せて、静かにポットを傾けた。注ぎ口の先端から白い湯気を上げながら、熱い湯が太めのパスタのように流れ落ちた。そのあとはゆっくりとポットを揺らし、珈琲豆にまんべんなく湯が掛かるように注いだ。豆はふっくらと泡立ちながらネルの上に盛り上がった。男は湯を注ぐ手を止めた。珈琲の成分をしっかり抽出するには豆を十分蒸らしてやらなければならない。男は漂う芳香に浸りながらネルの上に出来た薄茶色の泡を見つめた。頃合いを見計らって、再びポットの注ぎ口を豆の真ん中辺りに運んだ。ポットを傾けて、湯を中央から外に向けて円を描くように注いでいった。流れ落ちる湯が豆の端に達すると、今度は真ん中に向けて円を動かしていく。男はこの動作を繰り返した。微妙な時間の差ではあるが、豆の多い真ん中辺りはゆっくり、外は少し早く手を動かしている。ネルから滴り落ちる珈琲は、一筋の褐色の流れとなってサーバーの底に辿り着き、濃い琥珀色に満ちていく。」ちょっと長いですが、コーヒーを淹れる情景描写です。

「男はサーバーの上にセットしたネルに珈琲豆を入れて、コンロに乗せたポットを取り上げると、豆を蒸らすために、静かに手際良く湯を注いだ。茶褐色の泡を立てて盛り上がった豆から白い湯気が湧き立った。湯気の向こうで男が笑ったように見えた。私は黙ったままネルの上の豆を見た。二人の間に無言の時と深みのある甘い香りが流れる。その香りを嗅いだ私の心から憎悪が少しずつ溶け出していった。しばらくして男は、再びポットの湯をネルの上の豆に注ぎ出した。ゆっくりと円を描いて動くポットの先から流れ出す熱湯は、珈琲のエッセンスを抱きながら、琥珀色のしずくとなってネルの下から滴り落ちた。男は音もなくポットをコンロの上に戻した。」

いかがだったでしょうか。機会があれば、コーヒーの味や香りについての描写も紹介したいと思います。



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